台風接近でクモ膜下出血多発というニュースが携帯のニューステロップに出ていました。
朝日新聞のニュースですが、日本脳卒中学会の発表を報じたものです。
お昼休みに朝日新聞のページで見てみました。以下に記事の一部を転載します。
台風接近でくも膜下出血多発 沖縄・八重山諸島で調査
2008年03月21日10時01分
台風が近づくと、脳卒中の死因の約1割を占める、くも膜下出血が増える可能性があることが、国立病院機構・関門医療センター(山口県下関市)の泉原昭文・脳神経外科医長の調査でわかった。
低気圧が血管のこぶを膨張させるなどし、脳動脈瘤(りゅう)が破裂したと推測している。京都市内で20日から始まった日本脳卒中学会で発表した。
・・・泉原さんは、00年から約2年間、沖縄県立八重山病院に勤めた。冬や春に多いとされるくも膜下出血の患者が、八重山諸島では、台風シーズンに集中していることに気づいた。
台風が最も近づいた日を中心に、前後3日間を「台風接近時」として、接近時とそれ以外の時期のくも膜下出血の発症者数を比べた。その結果、接近時の100日あたりの発症が約3.4人だったのに対し、それ以外は約1.9人で、接近時の発症がふだんより約1.8倍高かった。
http://www.asahi.com/life/update/0321/OSK200803210003.html
個人的な記憶をたどってみても、たしかに結構多いなと思うのが夏休み中のくも膜下出血による死亡事故です。。
お盆休みの前後にほんとに多い気がします。それは酷暑による血圧上昇が引き金となっていたのかと勝手に考えていましたが、台風などの気圧の変化によるものが少なからずあるのかもしれませんね。
泉原先生の推察通りだとすると、気圧の変動が要因の一つとして十分考えられるべきものであると思われます。
低気圧と脳神経症状の関連性についは昔からよく知られていることですよね。
天気が悪いと偏頭痛が起こりやすいとか、同じく低気圧が近づくと昔交通事故で痛めた頸の痛みが出るとか、しばしば聞く話です。
その関連性について耳にはするものの、それほど命にかかわる症状とは思えないので放置されていることが多いのですが、泉原さんはしっかり調べてみたのですね。
八重山地方が台風のメッカだからこそ、気がついたことかもしれませんが、この傾向は昔からあったはずで、その気になって調べた脳神経外科医が今までいなかっただけということでしょうか。
でも、それで考えると、高い山に登ったり、飛行機に乗ったりすることによる気圧の変化は影響を与えないのでしょうか?
少し調べてみました。
医学情報検索サイトに
PubMedというものがあります。
ここではキーワードを入れ込んで検索をかけることで、関連する論文について探すことができます。
英語でしか入れられないのですが、ちょっと遊んでみましょう。
くも膜下出血は「subarachnoid hemorrage」です。
(医療関係者で「サバラ」と呼ぶ人も多いようですが、なんか無意味に恥ずかしい気がして私はSAHと呼びます。)
もう一つのキーワードをどうしようかと思ったのですが、台風では出てこなかったので、「subarachnoid AND weather(くも膜下と天気)」にしてみました。
87個の論文がヒットして、先頭のものはこれでした。
The influence of barometric pressure changes and standard meteorological variables on the occurrence and clinical features of subarachnoid hemorrhage.
Surg Neurol. 2007 Mar;67(3):264-72; discussion 272.
PMID: 17320635 [PubMed - indexed for MEDLINE]
少し孫引きしたりして、あらためてキーワードを入れなおしました。
「atomospheric pressure AND subarachnoid」(大気圧とくも膜下)で検索してみて、こんなのにたどり着きました。
1: J Neurosurg. 2001 Sep;95(3):391-2.Links
Relationship of aneurysmal subarachnoid hemorrhage to changes in atmospheric pressure: results of a prospective study.
Buxton N, Liu C, Dasic D, Moody P, Hope DT.
Department of Neurosurgery, University Hospital, Nottingham, United Kingdom. neilbuxton@doctors.org.uk
動静脈奇形からのくも膜下出血と大気圧変動との関連性について 2002年
この研究は2001年の報告ですが、その数年前の1998年から行われていたものです。
日本人の報告のこれもありました。
Oyoshi T, Nakayama M, Kuratsu J.
Relationship between aneurysmal subarachnoid hemorrhage and climatic conditions in the subtropical region, Amami-Oshima, in Japan.
Neurol Med Chir (Tokyo). 1999 Aug;39(8):585-90; discussion 590-1.
無料で原文が読めます。リンクはこちらです。とても長いので短縮しました。
http://tinyurl.com/29tgz5
すでに注目され、報告されていたのですね。
この論文の関連文献をさかのぼればもっといろいろあって、1975年ごろから報告はあるようです。
こういう報告があるのを知らなかった。分野が関係ないとはいえ、勉強させていただきました、ありがとうございます。
今回の報告はしかし、台風に限局して着目した視点が一般受けしますね。
どのように研究成果を報告すれば注目を引くことができるのかという勉強にもなりました。
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